両親が嫌いという苦しみ

若い頃、両親をとても憎みました。とにかく嫌いだったのです。毒親という言葉を見つけ、関連の本を読みあさるなど、親を攻撃する材料を探し回っては怒りを増幅させまくっていました。

一方で、世間では両親と仲が良い方がクールだと考えられています。私はクールでない素振りを見せるのが嫌で、親が嫌いということを周囲にはあまり漏らしませんでした。養子に出されたなどという、ドン引きさせるような話を聞かせるのが申し訳なかったこともあります。話せないことで、より両親への怒りはつのりました。

自身の感情に整理がついたのは、結婚してからです。結婚前は、年末年始に航空券が送りつけられ、強制的に顔を合わせることになっていたので周期的に嫌な気持ちがぶり返していたのですが、結婚してからは両親からのそういった干渉はなくなりました。割合に保守的な両親なので、結婚した後は自分のものではなく夫の家のものという認識に切り替わったのかもしれません。

両親の干渉が止んだことに加えて、夫の愛情が私の心を癒してくれました。夫はわざわざ高卒の女を選ぶだけあって、なんというか光源氏気取りのところがありました。私を進学させ、勉強を教え、身なりを整えさせ、職場での身の処し方を指導し、笑顔で会話することを学ばせました。親のように私の成長を目を細めて喜んでくれ、私も夫が喜ぶのが嬉しくて頑張りました。

夫と子ども時代のやり直しをし、信頼できる家族を手に入れたら、両親がどうでもよくなりました。嫌いきらいと言っていても私自身が苦しいだけだし、大人になろうと思い、それまで無視していた電話を取るようになり、毎回夫同伴とはいえ、時々は両親と会うようになりました(両親は私だけだと甘えが出て不愉快なことを言い始めるので、夫と一緒に会います。両親はお金や地位のある人に弱いので、夫の前だとおとなしいです)。嫌い!と思いつめて接しなければ、家族と過ごすのもそう悪くはないです。