本当に悲しいときは涙なんて出ない

私は泣き虫です。プレゼンに失敗しただけで人前でも涙が出てきます。泣かないように毎回こらえるのですが、それでも少しは泣いてしまいます。叱られたときにも涙が出てきます。泣いてたら次に叱りづらくなるじゃないか、上司の迷惑だ、そう思っていても涙は止まりません。ひたすら誤魔化すしかありません。

映画を見たり小説を読んだときにもすぐに泣いてしまいます。そういうときは大抵一人なので存分に泣きます。

でも、本当に悲しいとき涙は出ません。心が麻痺してしまって何も響かないのです。

失恋したとき、友人が亡くなったとき、第一志望の会社や大学に落ちたとき。不思議なくらい心は凪いでいて戸惑ったものです。

今までの人生で一番悲しかったことは、養子に出されたことなのですが、これについては麻痺を通り過ぎて平常心でした。心が麻痺しているときは、悲しみは感じなくても、麻痺している感覚はあります。でも、その時は別でした。

養子に出された経験は、他人とは違う人生になってしまった、私は普通の人間ではない、といった、分かりやすく言ってしまえば『ゴミ屑みたいな自分』というアイデンティティを確立させるまでのショックを与えたのですが、感情は動きません。幼すぎて分からなかったのかもしれません。長じて子どもを捨てるということがどういうことか理解した時に怒りは湧きましたが、そのときもやっぱり涙は出ませんでした。 

今でもよく泣きますが、泣けるということはまだ余裕があるのだと思うようにしています。涙も出ないような悲しい出来事は、もうたくさんです。