両親との力関係が逆転したとき

幼い頃は、文字通り両親の意向が運命を左右しました。住むところも、学校も、食べるものから着るものまで自由は殆どありませんでした。

親元を離れた時は、両親の勢力圏から抜け出せて安心しましたが、それでも彼らの言うことにある程度の敬意は払わずにはいられませんでした。私はまだ若くて経験が浅かったですし、両親は親元にいた頃と変わらず大きな存在だったからです。

力関係が逆転したのを確信したのは、彼らが離婚し退職してからです。彼らが頼るべき組織や家族を失った一方で、私は逆に組織や家族の後ろ盾を得て社会的立場が強くなっていました。口では変わらず恩義を感じるよう繰り返し、親の威厳を保とうと頑張ってはいましたが、不安が透けて見えました。

また、学歴や職歴で彼らを追い抜いてしまい、精神的にも距離を置いたおかげで、急に両親がみすぼらしく見えるようになり、畏怖する気持ちは完全に消えました。私の態度から完全に畏敬の念が消えたのを感じ取り、両親はますます哀れっぽく私に擦り寄るようになり、私に良くしなかった後悔すら口にするようになりました。これまできつく当たられただけ仕返しをしてやりたいと考えていたのが、こんな哀れな老人を今更叩いても、と情けなく思うようになっていきました。

今は両親の自尊心を損ねない程度に持ち上げながら仲良くするふりをしています。色々あったけれど、彼らも何十年も生きて苦労してきたのだから、老後に多少の祝福があってもいいじゃないかという気持ちです。いつでも離れることができると思えばこその余裕です。幼児を相手するように手加減するようになって以来、子ども時代は終わった、大人になったと感じました。

こんな風な関係になるとは想像もしていませんでした。時間は殆ど全ての物事を解決してくれます。