原語と翻訳

時々原語の小説を読んだり、映画を見たりします。

訳を介さないので、文体のリズムや言葉遊びが分かって面白くも感じますが、一方で母国語ではないので完全には理解できなかったり、読むのに時間がかかってイライラしたりします。

その点、翻訳はすらすらとストレスなく読めるのでより面白く感じます。けれど、読みたい本全部に日本語版があるわけではないのが欠点です。

翻訳に限界を感じることもあります。例えば、英語は言葉遊びを重んじる言語で、それも含めて楽しむところがありますが、翻訳ではそこを完全には表現できません。また、文化の違いから印象が変わってしまうこともあり、文化的な背景を知っていなければ理解が難しい表現もたくさんあります。

例えば、私は「ヒックとドラゴン」という映画がとても好きなのですが、レビューを読んでいると、最後のシーンでドラゴンをペットと表現しているところに引っかかって、それで好きになれなかったという方が結構いました。一方で欧米のレビューサイトでそういった意見を見かけることはありません。日本とアメリカでは、ペットという単語に対するイメージが違うのです。日本では対等でないとか、人以下といったニュアンスを含むこともあるのですが、アメリカではペットは家族と同等の扱いで、そこに差別的なニュアンスは(悪口で使うのでなければ)あまりありません。

また、冒頭と最後のシーンで同じ文構造を繰り返すという言葉遊びを行っています。冒頭でドラゴンは災厄(pests)だと言っているのを、最後に仲間(pets)という似た響きの単語で対比させているんですね。それでペットだという表現を使ったのです。英語ならではの美しいまとめ方だと思います。ただ、これを翻訳で表現するのは骨が折れます。翻訳のせいで作品にケチがついてしまうのは、しょうがないこととはいえ悲しいです。

海外の言語や文化を理解するのは難しいです。でも知的好奇心の湧く楽しい作業でもあります。

 

余談

ちなみに欧米レビューサイトでは、ヴァイキングの話なのに訛りがスカンジナビア系ではないということで文句を言っている人がいました。彼ら、訛りには厳しいんですよね…。てか、北ヨーロッパの方々の英語は綺麗すぎて、普通の米語英語との違いが分かりません…。フランスより南だと、大体どこの人か分かるんですけどね。