自分の人生を自分で決められない

再就職してから、夫に専業主婦に戻って欲しいと言われることがあります。もっと仕事がしたいんだそうです。朝出勤して早朝に帰ってくるのにさらに?24時間働くつもり?と笑いましたが、そうではないそうです。転勤してみたいし、転職してみたい。私が働いている限り、今の場所を動けない、それが嫌だと言います。

ただ、夫と暮らすことを考えて比較的転勤が少ない会社を選んだのは私も同じです。私も夫がいなければあちこち転勤してみたいです。でも二人一緒にいたいから転勤の希望は出していません。

カッとなって、私は何をしてればいいの、また大学に通うの?今度はもう就職できないと分かってるのに?それとも習い事に勤しめばいいの?ビザが下りればパートくらい見つかるかもしれないけど、旅行会社や現地法人の事務員をしてこれから一生暮らさなきゃいけないの?どうしてあなたが思い通りの人生を送るために、私の人生を犠牲にしなくちゃいけないの?どうしてもそうしたいって言うなら、専業主婦でいいって人と再婚してよ!

…と言おうと思いましたが、夫は単に何も考えておらず、無邪気に自分の考えを言ってみただけだと知っていたので口にはしませんでした。代わりに、赴任についていくのは1回だけって結婚の時約束したでしょ、とだけ言うと、夫は寂しそうに「うん」とうなづきました。少しだけ良心が痛み、瞬時になんで私だけ申し訳なく感じないといけないのだと腹が立ちました。私の内心はくるくると忙しいです。

本当に将来を読み辛い時代になったと思います。父の代から既に海外赴任は珍しいものではなくなっていましたが、母は専業主婦だったので帯同して現地の生活を楽しんでいました。

ただ、私達の世代は、共働きで、かつ海外赴任や地方転勤をそれぞれ複数こなすことくらい普通です。加えて、海外で就職することにもさほどためらいがあるわけでもありません。5年後どこにいるのか、今の仕事を続けているのかも定かではありません。なるべく避けたいですが、働いていれば単身赴任せざるをえないこともあるでしょう。将来が流動的なのに、お互い好きに動いていれば結婚生活が破綻するのは目に見えています。多少出世や転職を諦めてでも、一緒に暮らせるように努力しないといけないと思うのです。

私の人生は父と比べると自由です。より大きなチャンスに満ちています。でも夫と一緒に暮らす、犬を飼えるような安定した将来の見通し、そういったものと引き換えです。

仕事を辞めてしまえばこんなことで悩まなくてよくなる、どうしてそこまでして仕事がしたいんだろう、そうも思います。ただ、仕事以外にこの先の人生の空白を埋める手段が思いつかないのです。