【映画感想】マダム・イン・ニューヨーク

iTunesのオススメ機能が選んだ映画です。プログラムが選んでるだけなのに、次々と私のツボを突く映画(地味で、心の機微をよく捉えているもの)を紹介してくるので感心しています。

今回借りたものはインド映画です。インド映画も結構好きでちょくちょく見ているのですが、ハングリー精神溢れるものが多くて観る度に元気になる作品が多いなー、と感じています。

あらすじとしては、仕事や教育が英語で行われることが多いために英語が半公用語となっているインドで、英語を喋れない主婦が一念発起して英語を勉強する話です。

英語学習者あるあるすぎて涙が止まりませんでした。

家族の中で英語を喋れないのは主人公とその義母だけという状況で、主人公は娘や夫から散々馬鹿にされて悲しい思いをしています。特に発音を馬鹿にされるのは、本当に辛いんですよ。憎ったらしい娘なんて、私のクラスメートを思い出して悔しさがぶり返す勢いです。

言い返したくても言い返せず我慢しているなか、親戚の結婚式の手伝いに単身アメリカに赴くことになった主人公。一生懸命アンチョコを暗記して通関へ向かうも、理解出来ずまごついてしまいます。そう!そうなんですよ!ぜーんぜん、分かんないんですよね相手の言ってること。長期滞在のイミグレーションは特に質問が多くて若干込み入ってるので、全く理解が追いつかず、初めて留学した時は目を見開いたまま立ち尽くしました。『落ち着け。分かるまで聞き返せ。ゆっくり 話せ。お前はこれから勉強するんだろう?出来るよ!』と入国管理官に諭されながら何とか通過したことを思い出し、ここで涙腺が決壊しました。

何とか空港を出て親戚と合流したものの、用事を済ませる間待っててほしいと言われ、主人公は独りニューヨークの只中に放り出されます。何か食べ物をとカフェに入れば、店員に「ここはアメリカだ英語を喋れ」とばかりの横柄な接客をされ、注文もままならず店を飛び出してしまう始末。「こんなとこ来るんじゃなかった」とばかりに悔し涙を流す主人公。一緒になって泣く私。

一番分かりづらい英語って、実は小売店の店員の英語なんですよね。なまってるし、言葉は汚いしで所謂学校で習う英語から一番遠いところにあるので。加えて、そういうところで働く社会階層の低い人に限って、英語を喋れない人をすごく馬鹿にするんですよ。分かりやすく言い換えたり、ゆっくり話したりできないのです(まぁ、そういうのが出来ないから貧乏なんですけど…)。

自尊心がメタメタになった主人公は、慰めを求めて家族に電話するもいつもの調子で馬鹿にされるだけ。ふと見た語学学校の広告に縋るような気持ちで、英語を勉強する決心をします。初日の授業で、お菓子を作る内職をしていることを話すと、「君は起業家だね!」と感心されます。嬉しくなって夫に話すも鼻で笑われ、彼女は家族に黙って英語を習うことに決めるのでした。

ささやかな喜びを共有できない関係は虚しいです。大人だって新しいことを覚えたら褒められたり感心されたいのに、周りはそうはしてくれません。私の両親も、テストですとか目に見える成果は褒めてくれましたが、日々の成長には目もくれませんでした。そういうのって辛いんですよね。また泣きました。

その後は順調に学校へ通い、途中で挫けそうになるも唯一秘密を知っている姪に助けられ、無事語学学校を修了し、ハッピーエンドで結末を迎えます。

語学学校の雰囲気は懐かしかったです。私が通っていたところによく似ていて、皆様々な動機で通ってきていました。劇中、とあるクラスメートが「英語さえ話せれば アメリカ人なんかよりよっぽど優秀なのに」と語っていましたが、その気持ちもとてもよく分かりました。私はちゃんとした人間で普通の知性と感性を持っているのに、英語が喋れないだけでまともに扱ってもらえないのです。そういった悲しみは今でもよく覚えています。逆に、通じた時の喜び、成長を実感した瞬間の爆発的な嬉しさ、そういった感情も鮮やかにこの映画では描かれていて、観ていて「えがった…。本当にえがった。あんたはええ子やで…」と肩を抱きたくなりました。本当に良い映画です。

また、主演女優が目が醒めるほど美人なんですよね。伝統衣装のサリーも綺麗で目の保養になります。主人公の性格も、身持ちが固くてまさに良妻賢母、思いやりに溢れ、なおかつきちんと自尊心を持っている素敵な女性として描かれていました。

インド映画といえば唐突なミュージカルシーンとダンスが有名ですが、この映画では割と自然な挿入がなされています(CG満載のわざとらしいのもそれはそれで味わいがあるのですが)。ディズニー映画を違和感なく楽しめる人なら問題ないでしょう。インド映画にしては上映時間も短いですし、なかなか面白いですよ。

 

余談

ちなみに、彼女が通った語学学校は1ヶ月で英語を話せるように!という触れ込みで、アメリカの大学生である主人公の姪は「嘘ばっか!」と笑ってましたが、1ヶ月はとりあえず英語を話せるようになるのに十分です。私も現地で1ヶ月間毎日3時間語学学校に通いましたが、全く話せないところから、一通り考えていることを表現できるまでになりました。

もちろん完璧には程遠いですが、作中で生徒が話すレベルまでは喋れるようになります。英語の上達具合も現実味があって、うまいなぁ、と思いました。彼らの英語は、英語を話さない人から見ればすごくヘタに聞こえるでしょうが、あれで実は十分用が足せるのです。