子どもを産んで、ロールモデルになってよ!

転職直後にメンターがつきました。メンターとは、精神的なサポートを行う、上司ではない先輩職員のことです。人材定着策の一環とのことでした。

私のメンターは面倒見の良い人で、何くれとなく世話をしてくれました。私が既婚者で仕事への熱意もあると知ると、子どもを産んで他の女性社員のロールモデルになるべきだ、と力説されました。

私「っつっても、子育てと仕事の両立は大変ですよ。私は子どもがいるからって仕事をセーブするつもりは毛頭ありませんし、かといって両親を頼るのは嫌です」

メンター(以下 メ)『ダンナと交代で面倒見ればいいじゃん!月水金はハルさんが定時で上がって、火木はダンナが早く帰る!そうすれば週2回は好きなだけ仕事できるじゃん』

私「突発的な仕事が降ってきたらどうすんですかそれ…。知らんぷりして帰れと?私と夫の繁忙期が重なったら即終了ですよ。言っておきますけど、急に単発でベビーシッター雇うのは不可能なんですから」

メ『そんときは会社がサポートするよ!帰っていい!家庭が大事なんだから』

私「家庭が大事なのは独身も子どもがいない既婚者も一緒なんですが…。それはいいとして、評価が下がりますよね、そんなことしてたら」

メ『…そんなことはないよー』

私「ところで、お子さんが二人いらっしゃると伺ってますけど、奥様はお仕事は何を?こんなところで飲んでないで、帰って育児に参加なさっては?」

メ『専業主婦だよ。家のことは妻に任せてあるからね』

私「(ダメだこりゃ)」

メ『とにかく、重要な仕事を任されて、なおかつ子育ても出来るって姿を見せたら、周りも子育てしたい!ってなるじゃん。頑張ってみてよ』

 

世の中の流れとして、子持ち正社員が一番の勝ち組であることには論を俟ちません。仕事と子育ての両立を達成した暁には、レアケースであるだけに出世も約束されるでしょう。

ベビーシッターに24時間経営の保育所、全寮制の学校、塾、長期休暇中の語学留学や夏休みキャンプを駆使すれば、子どもを持ちつつ仕事に全力投球することは不可能ではありませんし、不可能でないだけに「子ども」というアクセサリーの魅力は抗いがたいものです。今の世の中で、豊かさと余裕を誇示するには一番分かりやすい指標ですからね。

しかし両立にはお金がかかりますし、出世した分を加味したとしても大幅な赤字になります。それに子どものスケジュールに合わせて常に預け先を探し続ける生活は神経をやられてしまいそうです。やっぱりそこまで出来るのは、仕事が好きで子どもも好きというごく一部の人に限られるのではないでしょうか。あるいは祖父母に丸投げできる人か。

(それに子どもが不満がることは容易に予想がつきます。たった1年の赴任期間でしたが、分別があるはずの夫からは常に淋しいと訴えられ、申し訳なさで胸が潰れそうでした。生活を共にしない家族というのは成立しづらいと感じています)

会社としては、第一線で働きつつ子育てもする輝く女性を増やしたいのでしょうが、そんな超人をお手本にする人が増えるのは幸せなことには思えません。幸い、私の会社は福利厚生が充実していますし、『時短で大した仕事はしてないし、子育ても中途半端だけど結構幸せです』という大多数の育児中の社員を紹介する方が、よっぽど就活生を惹きつけることが出来ると思うのですが。まぁ、そんな人が増えたら困るから紹介しないんでしょうけど。