世の中は少しずつ変わる

私が関わった仕事が新聞に載り、ちょっとした反響を呼んだことがありました。

しかしそれだけで何も変わりませんでした。仕事をしていた最中は物凄く興奮しましたし、一生懸命やっていただけにガッカリしました。

溜息をつきながら、「世の中って変わりませんね」と一緒に仕事をしていた上司に愚痴ったところ、『針の先ほどでも前進したことを喜ばないと、この仕事に限らずどんなこともやっていけないよ。ガラっと変わるのは天才の領域か、そうでなかったら大抵が偽物だから』と笑って諭されました。

私は社会に対する不満が多く、大きな変化を望みがちな傾向があります。けれど、経緯や理由があって現状は現状としてあるのだし、変えることは難しいです。こんなとき、上司の言葉をよく思い出します。大きく変わるように見えるものは偽物ー。本物の変化は地殻変動のように感じ取れないほど少しずつ進むのです。

何か目新しいアイデアに飛びつきたくなるときは、このことを肝に銘じて気を静めます。こんなこと意味があるのかと疑問に思った時には、あと少し様子を見ようと宥めます。世の中を呪いたい時には、あと10年待とうと言い聞かせます。怒りや疑問を保ったまま現状を静観する、枯れたスタンスを保つのは中腰で立ち続けるようなものでしんどいですが、今のところはこの態度が世間と対峙するのに丁度良いと信じています。