はぢめての政治

小学生の頃、ディベートの授業がありました。ディベートについて簡単な説明を受けた後、いくつかの組に分かれて与えられたテーマを論じることになりました。その時のテーマは今でもはっきりと覚えていますが、諫早湾埋め立ての是非でした。そういえば、あれからもう20年以上経つのにまだ決着がついていないんですね。

半月ほど準備期間が与えられ、張り切った私は両親に頼んで諫早湾へ旅行に出かけました。市役所にも行き様々な統計資料を貰い、相手が持ち出してくるであろう意見をリストアップし反論を考え、小学生ながらなかなか立派に準備をしました。

今考えれば当たり前なのですが、たった一コマの授業のために熱心に準備をしたのは私だけで、あっさりと相手の主張を覆すことができました。あんまりにも自信たっぷりに否定するので、相手チームの声は尻すぼみになっていき、最後には私の独演会のようになっていました。私は当然100対0で私のチームの勝ちだろうと思っていました。

けれど、票を取ってみると、かろうじて勝てたものの票は拮抗していました。どうしてろくな話もできないチームに票が入ったのか当時の私は全く理解できず憤慨しまくってましたが、今考えると何が悪かったのかよく分かります。正しさを前面に押し出しすぎると反感を買うのです。確かに私はクラスで一番よく頑張ってましたが、賛意を得ることについてはクラスメートの方が数段上でした。完全に勝利を収めるためには、聴衆の心情も加味して臨機応変にトーンを変え、論敵には努めて和やかに接し、話す内容も共感を得やすいものになるようお化粧しなければならなかったのです。

政治の大切さを初めて知った(のは大分後になってからですが)忘れられない経験です。あのとき失敗しておいて良かったと思います。