湯川遥菜さんは私かもしれない

湯川さんと後藤さん、残念なことになってしまいましたね。御冥福をお祈りいたします。

後藤さんについては美談も漏れ聞くものの、湯川さんはネットではバッシングを受けています。ですが、私は素直に彼を叩くことができません。湯川さんほど極端ではないにせよ、私も危険を愛する面があるからです。

私も銃が趣味、といえるほど頻繁に撃つ機会があるわけではないのですが、海外で射撃場を見かけたら行く程度には好きです。射撃場は大抵郊外にありますし、値段も決して安くはないので、それでもわざわざ撃ちに行くってことは相当好きなのだろうと思います。

ライフルを手にしたとき独特の高揚した気分と、人を殺せるものを持っているんだという厳粛な気持ちがないまぜになる瞬間は、悪くないです。いざとなれば人を殺せるんだな、そう実感しただけで心まで強くなった気がしますし、そう考えることで日常の色々なことをやり過ごせたりもします。

また、危険地域に行くこともあります。ボディガードをつけて途上国のスラム街を観光したりですとか。こちらは危険な場所が好きというよりも、見たいものがあるから行くのですが…。

私は基本的にリスクを慎重に避ける方ですが、やりたいことまで諦めてしまうのは生きている甲斐がないと考えてます。治安情報を集めている途中に不安になったりもしますが、毎回最終的には大丈夫だろうと何の根拠もなく思い込んで出発しています。普通に生活していても死ぬことだってあるんだし!というのが、そういったところへ行く時の私の気持ちです。きっと、湯川さんも同じことを考えていたのだと思います。

頻繁に武器を持って自分自身まで強くなった錯覚を覚え、危険な土地に慣れすぎて死に接する感覚が鈍くなってしまえば、私も湯川さんのようになってしまったかもしれません。そうならなかったのは、湯川さんはほぼ無職で好きなことをする時間があったのに対し、私は会社勤めをしていたこと、彼が行くのを止める人がいなかったのに対して、私は家族や職場、なけなしの社会的地位等それなりのしがらみがあったーそれだけだったのだと思います。

ちなみに人質死亡のニュースを聞いて、行動を改めようとは…思いませんでした。既に彼らのテロの標的となっているイギリスに住んでいるのでそう思わなければやっていられないのもありますし、加えてやはりどこかで、彼らほどあからさまに危険な場所に行くわけじゃなし大丈夫でしょと楽観視しているのもあります。同じように感じている未来の人質候補はたくさんいると思います。だから多分これからも、日本人はテロの恐怖と対峙しつづけていかなければならないのだと思います。