家事を教えるときにいつも念頭に置いていること

勤勉な専業主婦であるに義母に育てられたせいか、私の夫は結婚当時家事があまりできませんでした。

夫が一人暮らしをしていたアパートでは、シンクは水滴一つなく、風呂場の排水溝からは巨大な毛玉が取れ、床には綿ぼこりが舞い、洗濯物は生乾きの臭いを放っていました。見かねて時々義母が掃除に来ると聞いて、家事雑用の一切を夫に期待するのは止めよう、決して本件については不満を覚えまいと固く決意しました。

結婚してしばらく経った頃に「さんさん録」というマンガを手に取りました。妻に先立たれたおじいさんが家事を覚える話なのですが、生前の奥様が素敵なんですよね。楽しげに家事をして、おじいさんの興味を引こうとするシーンが印象的でした。

私は何かを教えるのが苦手というか、上下関係ができるのを避けられないのが心苦しく、それまで夫には家事を一切教えませんでした。けれど、マンガを読んでこういうやり方もあるのか、と発見して以来、なるべく楽しそうに家事をするようにしました。

そうすると、夫から「これやってみてもいい?」と声がかかるようになりました。ホットケーキをひっくり返すのとか、錦糸卵を切るとか、クッションをはたいて膨らませるとか、そういう家事です。そのうちシーツ交換や洗濯物の収納、食器の上げ下げを一緒にやり始め、アイロンがけや洗濯、トイレの詰まり直しもするようになりました。今では料理も自ら作るようになり、家電の設定も全部できるようになりました。

今では私が席を立つと、何したらいい?と聞いてくれるようになったばかりか、一緒に掃除しよう!と誘ってくるまでになりました。全く予想もしていなかった成果です。亭主関白を気取りたがる一方、私ばかり立ち働いているのはやっぱり気まずいらしいです。根本的に良い人なんだな、と思います。