【読書感想文】1984

村上春樹じゃない方の1984です。

イギリス人の中で、「読んだことないのに読んだふりをしてしまう本ナンバーワン」として名高いようです。つまり、あらすじくらいはみんな知ってるんですね。共産主義国で権力に押しつぶされる庶民の姿を書いた小説です。

独特の造語が出てきて、時計仕掛けのオレンジのような面白さがあります。同時に、少し怖く感じました。思考を言語を用いてする以上、言語そのものを狭めてしまえば思考の幅も狭まり、国にとって都合の良い考え方をする人が多くなるだろうという考えの元、どんどん言語を簡略化した結果、これらの造語が生まれたからです。言葉ひとつを取っても、人の行動だけでなく内面にまで干渉しようとする共産主義国(というよりソ連ですね)への当時の人々の恐れをよく表しています。

他にも、人々を分断させ、信頼し合えなくする仕組みを作るなど、人心掌握(悪い意味で)に注力する国家の様子がおどろおどろしく書かれています。実際に現代社会で使われている手法も描かれており、完全なるフィクションとは言えないのが何とも恐ろしいところです。

この小説の舞台はロンドンなのですが、出てくる地名(革命広場とか、いかにも共産主義的な名前になっているのですが、どこかは分かるようになってます)に覚えがあるので、実際の場所と比較しながら読む楽しみもありました。全体として、とても面白かったです。