【読書感想文】国際機関で見た「世界のエリート」の正体

国連などで働く国際公務員の仕事内容と待遇(給与等)、就職について書かれた本です。非常にコンパクトにまとまっています。

驚いたのが、選考の厳しさとクビの切られやすさ(あくまで日本と比べた場合ですが)に対しての待遇のイマイチさ。上場企業のサラリーマンくらいしか貰ってません。著者が日本人職員が少ないと嘆いていましたし、同じことをリクルーターからも聞いたことがありますが、納得です。英語がペラペラで修士号を持っててかつ有能な人が、紛争地帯かニューヨークのような生活費のバカ高い都市での勤務と日本で貰える程度の給料に耐えてまで、国際公務員になりたいと思うはずがありません。

仕事内容もあんまり楽しそうではなく、交渉ごとでは相手を疲労困憊させて玉虫色の合意に持っていくことと徹夜で議事録を起こすこと…要するに頭脳というよりは体力勝負です。

以前にIMFと世界銀行の職員と一緒に、外国人に浴衣を着付て茶室を模したブースで写真を撮影するという催しをしたことがありましたが、彼らが誰かの喜ぶ顔を仕事で見ることはないから楽しいと揃って口にするのを聞いた時の複雑な気分を読みながら思い出しました。世界とか国とかの大きな単位で仕事をする醍醐味はきっとあるんでしょうが、彼らは日中は書類の山に埋れて、遠い国で起こったあらゆる悲劇を単なるデータとして扱っているのでしょう。目的が分からなくなるほど細かく刻まれた仕事を振り分けられて。

いちおう大学院を出たら私も国際公務員に応募できるようにはなりますが、選択肢としてはないなーと思わされました。大体、空港にタクシーで行くのを倹約家と讃える金銭感覚の持ち主とはうまくやってけまへん。職場が国際機関の近くにあるので彼らがたかだか通勤でも毎日タクシーを使うのを見ていますが、あんまりいい気分はしませんしね。