【読書感想文】中卒労働者から始める高校生活

Kindle版が期間限定で無料になっていたので読みました。

両親がいなくなってしまい、一人で妹を養う中卒労働者の主人公が、あるきっかけで向学心に目覚め、通信制高校に通うというストーリーです。

主人公は、学歴がないことを気に病んでおり、そのせいで社会でもあまりうまくいっていません。ですが、学歴があれば何か変わるはずという期待を持って学校に通っています。私にも身に覚えがあることなので、感情移入しながら読みました。

学歴がないことの辛さって、給与が少ないことや選択肢の狭さもさることながら、それだけではないんですよね。私には劣等感が一番堪えました。

小学校に入る前、知的障碍だと診断を受けてから、私はバカだから勉強をしなくていいと思っていました。小中高とずっと授業中寝て過ごし、高校卒業後、迷いなく就職する道を選びました。

私が最初に入社した会社は、一流大学出身者や博士号取得者が珍しくない職場でした。はじめは高卒なのに大企業に入れて嬉しいと素直に喜んでいましたが、うまく仕事ができなかったりすると、高卒だからできないんだと落ち込みました。今なら学歴が問題だったのではなく、単に無能だっただけだと考えられますが、当時は学歴のせいにしていたのですね。

それに、私は一般職採用だったので、総合職採用の同期とはどうしても距離を感じました。飲み会で仕事の話をしていても、レベルが違うので恥ずかしかったです。当時は総合職同期が私を違う人種扱いしているからうまく付き合えないのだと決めていましたが、今から思えば被害妄想に過ぎませんでした。

また、子会社の人に指示を出す時にナメられるのも辛かったです。子会社の人は壮年で博士号を持っており、10代の高卒に頭を下げられないのは当然だったとは思います。

退職後、夫の勧めで大学に通いました。初めての海外暮らしでストレスが溜まっていたこともありますが、大学でうまくいかないことがあると、夫に「私は頭が良くない。頭の良い夫には私の気持ちなんて分からない」と当たり散らしました。同情してもらえるかなと期待しましたが、夫は『頭の良し悪しや障碍の有る無しは理由になってない。大学が入学を許した以上、君にはそれだけの能力があるんだろう。必要な教材は全部買ってやるし、分からないところがあれば教えるから勉強を続けろ』と取り合ってはくれませんでした。学費を出しているのが夫である以上、私に決定権がある訳もなく、その後なんとか大学を卒業しました。

現在、あんなに遠く感じていた当時の総合職の同期と同じくらいの学歴を手に入れて思うのは、別に仕事のできるできないと学歴は関係なかったな、ということです。結局、仕事の出来を決めるのは、必ず遂行するという意志の強さ、コミットメントの強さなんじゃないかと今は思っています。私はコミットメントが甘いので、やっぱり仕事はできないままです。

でも教育を受けるのは、別に悪くないです。私から被害妄想と卑屈さを取り除いてくれ、やっとまっすぐ自身の仕事の出来なさと向き合うことができました。言い訳が利かないというのは、また違った辛さがあります。ですが、コンプレックスに苛まれてグズグズしていた頃に比べると気分は爽快です。